レッドライトセラピー(赤色光療法)を調べた研究は、肌だけでなく筋肉も対象にしています。運動の分野では「いつ当てるか」で研究が分かれてきました。運動の前に当てるか、運動の後に当てるかです。ここでは、この2つのタイミングごとに、これまでの報告をまとめます。
筋肉にも光は届く
赤から近赤外の光は皮膚の奥まで届きやすく、その下の筋肉の細胞にも作用しうると考えられています。細胞の中でエネルギー(ATP)を作るミトコンドリアが光を受け取る、というしくみです。これは、肌を対象にした研究で説明されているしくみと共通しています。
Ferraresi らは2016年の総説で、ヒトの筋組織を対象にした臨床試験を集めました。そして、運動の前に光を当てる場合と、運動の後に当てる場合の両方が調べられてきたとまとめています[Ferraresi 2016]。
運動の「前」に当てる
ひとつは、運動の前にあらかじめ光を当てておく方法です。「プレコンディショニング(前処置)」と呼ばれます。運動そのもののパフォーマンスを支えられるか、あるいは運動後の疲労を抑えられるか。研究はそこを調べてきました。
Vanin らは2018年の系統的レビューとメタ分析で、健康な人を対象にした複数の試験を集めました。光が筋のパフォーマンスや疲労にどう関わるかを調べた試験です。運動前に当てる方法は、その中心にあるテーマのひとつでした。そのうえで、全体としては一定の条件で好ましい方向の結果が報告されていると書いています。ただ、試験ごとに波長や光の量、当てる部位がばらついていることも指摘しています[Vanin 2018]。具体的な数値は赤色光と筋疲労——パフォーマンス指標で測られてきたことで扱っています。
運動の「後」に当てる
もうひとつは、運動を終えたあとに光を当てる方法です。回復を助けられるかどうかを調べます。激しい運動のあとには筋肉のダメージや炎症が起こり、遅れて出てくる筋肉痛(いわゆる遅発性筋肉痛)もあらわれます。そこに光がどう関わるかが調べられてきました。
Ferraresi らの総説でも、運動後に当てる方法は運動前に当てる方法と並んで扱われています。どちらのタイミングにも研究の積み重ねがあると、Ferraresi らはまとめています[Ferraresi 2016]。痛みの数値を報告した研究は赤色光と遅発性筋肉痛——運動の翌日に来る痛みの研究で扱っています。
「条件がそろっていない」ことに注意
運動分野の研究を読むときは、試験ごとに条件が大きく違うことに注意が必要です。波長、光の量、当てる筋肉、運動の種類、測る指標が、それぞれの試験で異なります。そのため、結果をそのまま横並びで比べたり、ひとつの数字にまとめたりするのは難しいのが現状です。Vanin らも、この条件のばらつきを今後の課題に挙げています[Vanin 2018]。
肌の研究と同じく、「光の量には適した範囲がある」という前提はここでも変わりません。多く当てるほど良い、という単純な話ではありません。
この記事のまとめ
- レッドライトセラピーは、肌だけでなく筋肉を対象にした運動分野でも研究されています。
- 運動の「前」に当てる方法と「後」に当てる方法は、それぞれ分けて調べられてきました[Ferraresi 2016]。
- 系統的レビューでは、一定の条件で好ましい方向の結果が報告されています。ただし、条件のばらつきが課題として挙げられています[Vanin 2018]。
- 波長・光の量・部位などの条件が試験ごとに違うため、結果を単純に比べるのは難しいのが現状です。
参考文献
- Ferraresi C, Huang YY, Hamblin MR. Photobiomodulation in human muscle tissue: an advantage in sports performance? J Biophotonics. 2016;9(11-12):1273-1299. PMID: 27874264
- Vanin AA, et al. Photobiomodulation therapy for the improvement of muscular performance and reduction of muscular fatigue associated with exercise in healthy people: a systematic review and meta-analysis. Lasers Med Sci. 2018;33(1):181-214. PMID: 29090398