レッドライトセラピー(赤色光療法)は、赤色から近赤外の波長の光を体に当てる方法です。学術的には Photobiomodulation(PBM、光生体調節)と呼ばれます。ここでは痛みと炎症にしぼって、光を当てたときに体の中や関節で何が観察されたのかを紹介します。手がかりになるのは、細胞を使った実験と、ヒトを対象にした研究です。

炎症にかかわる物質とは

炎症が起きているとき、体の中では小さなタンパク質がつくられます。細胞どうしが信号をやりとりするための物質で、サイトカインと呼ばれます。TNF-α(腫瘍壊死因子アルファ)、IL-1β、IL-6、IL-8 などがその代表です。これらは炎症を進める側の信号としてはたらきます。関節リウマチのように関節で炎症が続く状態では、こうした物質が多くつくられます。

では、赤色光や近赤外光はこの信号のつくられ方を変えるのでしょうか。細胞のレベルで調べた研究があります。

関節の細胞に光を当てた実験(Yamaura ら 2009)

Yamaura らが2009年に報告したのは、培養皿の中で行った実験です。関節リウマチの患者から採取した滑膜細胞(関節の内側をおおう膜の細胞)を使いました。この細胞に、炎症を引き起こす TNF-α を加える前や後に、810 nm の近赤外光を当てています。

照射量のひとつは 5 J/cm² でした。J/cm² は照射した光の量を表す単位で、1平方センチメートルあたり5ジュールを当てたことになります。この 5 J/cm² を TNF-α の前または後に当てたところ、TNF-α と IL-1β という2つのサイトカインで mRNA の量が減りました。mRNA は、タンパク質を作る設計図にあたる分子です。さらに光の量を増やした場合には、細胞の中の TNF-α、IL-1β、IL-8 というタンパク質そのものも減っています。一方、他の7種類のサイトカインには変化がみられなかったと報告されています。

Yamaura らは、炎症の信号を出す物質が減ったことに注目しています。炎症をともなう状態で光を当てたときに痛みがやわらぐことと、関係している可能性があるという見方です。ただし、これは培養皿の中の細胞を使った実験です。ヒトの体の中で同じことが起きると示したわけではありません。

ヒトを対象にした研究のまとめ(Bjordal ら 2008)

ヒトを対象にした試験を集めて分析した研究もあります。Bjordal らが2008年に報告したのは、テニス肘に対する低出力レーザー療法(LLLT)についてのシステマティックレビューとメタ分析です。テニス肘は外側上顆腱症とも呼ばれ、ひじの外側の腱が痛む状態を指します。メタ分析は、複数の試験の結果を統計的にまとめて全体像をつかむ方法です。

Bjordal らは18件のランダム化比較試験を見つけました。そのうち条件を満たした13件(合計730名)を分析にまとめています。使われた光は 632 nm と 904 nm が中心でした。照射量は、腱の付着部に直接光を当てた一部の試験では 0.5〜7.2 ジュールの範囲です。痛みの強さは VAS で測られています。VAS は、患者が自分で感じる痛みを線の上で示す方法です。全体で見ると、その改善はプラセボと比べて平均で 10.2 mm(95%信頼区間 3.0〜17.5)の差でした。

腱の付着部に直接光を当てた試験だけを取り出すと、この差は大きくなりました。904 nm を使った5件では 17.2 mm、632 nm を使った1件では 14.0 mm です。一方、経穴(いわゆるツボ)を狙った試験では差がみられませんでした。820 nm・830 nm・1064 nm の波長を使った試験でも、差はみられていません。Bjordal らは、重い副作用は報告されなかったとも書いています。

同じ「光を当てる」でも、波長や当てる場所によって報告される結果は変わります。この分析からは、そう読み取れます。

この記事のまとめ


参考文献