レッドライトセラピー(赤色光療法)では、効果より先に気になることがあります。「目に入っても大丈夫なのか」「がんとの関係はどうなのか」「肌の色で違いはあるのか」。この3つについて、研究が何を報告し、何をまだ調べていないのかをまとめます。
目——光源を見つめるという条件
日中、人の目は長い波長の紫外線と可視光、そして短い波長の赤外線を浴びています。まず角膜(目の表面の透明な膜)が光を弱め、残った紫外線のほぼすべてと赤外線の一部を水晶体(目のレンズ)が吸収します。ここまでは2016年の総説が整理している内容です。日光や、それと同じくらいかやや強い光を出す人工の光源を浴びたあと、水晶体は光の化学反応によっても熱によっても傷つくことがあるとされます。疫学研究(多くの人の記録から関連を調べる研究)からは、短い波長の紫外線と皮質白内障(水晶体が濁る白内障の一種)に浴びた量に応じた関連があること、短い波長の赤外線を日常的に強く浴びる労働者で加齢性白内障の有病率が高いことが示唆されています[Söderberg 2016]。
ただし、この総説が扱ったのは紫外線と短い波長の赤外線です。赤色光や近赤外光が目にとって安全かどうかを直接調べたものではありません。波長ごとの記述として抄録に示されているのは、1090 nm(ナノメートル)では水晶体での光の化学反応による影響が否定されたことと、近赤外の他の波長は今後調べる必要があるという著者らの留保だけです[Söderberg 2016]。この報告は、赤色光が目に安全だという裏づけにも、危険だという裏づけにもなりません。
では、光源そのものを見つめ続けるとどうなるのか。2024年の研究は、市販の近視用の低レベル赤色光機器2種について、光の強さを実測しました(放射計測)。どちらも3分間続けて見つめると、網膜(目の奥で光を受け取る膜)が受けてよいとされる光の上限(最大許容被曝量)に近づくか、それを超えるという算定でした。著者らは、これは網膜を光の化学反応と熱による損傷のリスクにさらすものであり、安全基準が確認されるまで臨床医は小児への近視用の赤色光療法の使用に慎重であるべきだ、としています[Ostrin 2024]。
一方、同じ療法で報告された症状を集めた2024年の系統的レビュー(決めた手順で論文を集めて整理する方法)は、別の面を伝えています。最も多かった目の症状は一時的な残像で、報告された研究では6分以内に消えていました。症例報告も2件あります。どちらも同じ1人の患者についてのもので、視力の低下と、目の奥を断面で撮る検査(OCT)の異常が見られました。この視力の低下は元に戻るもので、中止から4か月後に完全に回復しています。恒久的な視力の喪失の報告はなく、不可逆的な視機能の喪失や目の構造の障害も確認されていません[Chen 2024]。
近視の赤色光療法を12か月にわたって調べた試験もあります。中国で行われた多施設のランダム化試験(参加者を無作為に振り分けて比べる試験)で、8〜13歳の子ども264名(分析対象246名)が参加しました。赤色光を出す機器と単焦点眼鏡を併用する群と、眼鏡だけの群に分けて比べています。機器は650 nm の赤色光を出し、1回3分・1日2回・週5日、自宅で親が見守るなかで使われました。この3分は試験での1回あたりの使用時間で、さきほどの見つめ続けた場合の算定[Ostrin 2024]とは別の研究の数字です。照射条件は試験のもので、人が機器を使うときの目安ではありません。重篤な有害事象は報告されていません[Jiang 2022]。対象は子どもで、大人に当てはめられる結果ではありません。
ここまでの報告のうち機器を調べたものは、いずれも目に当てるために作られた近視用のものです。肌や体に当てる市販のパネルとは、設計も光の量も使い方も違います。角膜を通ったあと水晶体に吸収される波長帯があり[Söderberg 2016]、近視用の機器を3分続けて見つめると網膜の上限に近づくか超えるという算定もあります[Ostrin 2024]。この記事で扱った範囲から言えるのは、光源を直接見つめない、ということです。機器の数字の読み方は家庭用LED機器のスペック表を、研究の条件と突き合わせるにあります。
がん——細胞に変化を起こすなら、という懸念
光が細胞の中で何かを変えるのなら、がん細胞にも何か起きるのではないか。2023年の系統的レビューによれば、光生体調節(赤色光・近赤外光を体に当てる方法の学術的な呼び名)は標的の細胞の中で遺伝子・たんぱく質・代謝のはたらきを動かします。この操作が、がんに関する安全性への懸念につながってきた——レビューはそう述べています[Glass 2023]。細胞での観察は光が細胞で起こす3つの変化にまとめています。
このレビューが集めたのは、美容目的の皮膚の若返りに使われた赤色光(625〜700 nm)と近赤外光(700〜1100 nm)についての57件の研究です(培養細胞での実験41件、動物での実験9件、臨床試験7件)。確立された条件の範囲では、赤色光と近赤外光は主に健常な細胞の増え方を高めたと整理されています。生存率への影響にはっきりした傾向はなく、健常な細胞にがんの前段階のような変化(異形成)を起こすこともない、とまとめられています。同じ条件の光を腫瘍(がん)細胞に当てた場合は、増え方と生存率が下がることもあれば、差が出ないこともあったと報告されています。浸潤する力(周りの組織に広がる力)は一定しないとされています。動物の腫瘍モデルでも結果はばらつき、はっきりした傾向は見られませんでした[Glass 2023]。
臨床の側では、この方法を重大な有害事象(新しく見つかったがんや再発したがんを含みます)と結びつける、関連する臨床試験のデータはないとされています。著者は、いまある臨床・前臨床(培養細胞や動物での実験)のエビデンスは皮膚の若返りにおいて腫瘍学的に安全であることを示唆しており、過去にがんの治療を受けた人がこれを避けるべきだとする根拠も見当たらない、と結論しています[Glass 2023]。これは安全性の検討であって、がんに効くという話ではありません。がんの治療を受けている人、受けたことがある人が実際にどうするかは、主治医など医療者に相談する話題です。
より重い場面での報告もあります。2019年の系統的レビューは、がん治療に伴う副作用のケアに同じ方法を使った27件の論文を集めました。対象は、口の中の粘膜の炎症、リンパのむくみ、放射線による皮膚炎、手足のしびれ(末梢神経の障害)の4種です。背景にあったのは、光が残った悪性の細胞の増殖を促し、腫瘍の再発や別の新しいがん(二次がん)のリスクを高めないか、という問いでした。ほとんどの研究で副作用は見られませんでした。著者らは、いまある文献からは、この使い方が腫瘍の安全性の問題の発生にはつながらないことが示唆される、と述べています[Paglioni 2019]。これはがん治療の副作用へのケアについての報告で、家庭用機器の使い方を示すものではありません。
肌の色——同じ条件でも、届く量は同じではない
3つめは肌の色です。同じ機器を同じ時間使っても、届く光の量は肌の色で変わりうると報告されています。2024年の総説は、公開されている生体内の光学測定値(生きた組織で測った光の値)20報を集め、肌の色のタイプ(フィッツパトリック皮膚タイプ I〜VI)ごとに、400〜1600 nm の範囲でまとめました。色の濃い肌の吸収係数(光が吸われる度合い)は、薄い肌をおよそ6〜74%上回ると報告されています(400〜1000 nm)。光は深いところへ進むほど大きく弱まり、0.1 mm の深さで14〜18%が失われ、残った光の90〜97%は1.93 mm までに失われるとされます(肌のタイプによる)。最も光がよく通るのは940 nm を超えた領域でした。著者らは、940 nm を超える波長なら肌の色に左右されない光技術が可能になりうるとしつつ、1000 nm を超える領域のデータは限られているとも述べています[Setchfield 2024]。
この総説が扱っているのは光の届き方という物理の話で、肌の色ごとに安全性を比べた研究ではありません。肌の色による届き方の差は、家庭用LED機器の記事でも触れています。
わかっていないこと
目については、近赤外の他の波長は今後調べる必要があるという留保が残ります[Söderberg 2016]。安全基準が確認されるまで臨床医は慎重であるべきだ、という著者らの言葉もあります[Ostrin 2024]。一方で、系統的レビューの範囲では不可逆的な障害は確認されていません[Chen 2024]。後の2つは、理論上の上限を算定したものと、報告された症状を集めたもので、答えている問いが違います。期間が示されているのは12か月の試験までです[Jiang 2022]。それより長く使い続けた場合と、肌や体に当てるパネルを目に向けた場合は、ここで扱った資料が調べていない範囲です。
がんについては、動物の腫瘍モデルにはっきりした傾向がなく[Glass 2023]、副作用が見られなかったのも「ほとんどの研究」であって「すべて」ではありません[Paglioni 2019]。2件が調べたのは、美容目的の健常な皮膚と、がん治療に伴う副作用のケアです。腫瘍そのものに光を当てた場合については、何も言えません。結論の言い方も、どちらも「示唆する」という限定つきです。
肌の色については、1000 nm を超える領域のデータが限られています[Setchfield 2024]。この記事で見た他の報告が肌の色ごとに何を示したのかも、ここで扱った資料からは分かりません。このサイトが何を根拠として扱うかは編集方針に書いています。
この記事のまとめ
- 目:市販の近視用機器2種では、3分続けて見つめると網膜の被曝上限に近づくか超えたと算定されました[Ostrin 2024]。報告された症状の系統的レビューでは、不可逆的な障害は確認されていません[Chen 2024]。
- 目(子ども):8〜13歳の子ども264名(分析対象246名)を2群に分けた12か月の試験で、重篤な有害事象は報告されていません。対象は子どもで、大人に当てはめられる結果ではありません[Jiang 2022]。
- がん:皮膚の若返りに使う光と重大な有害事象を結びつける、関連する臨床試験のデータはないとされ[Glass 2023]、副作用ケアの27件でもほとんどの研究で副作用は見られませんでした[Paglioni 2019]。どちらも腫瘍そのものに光を当てた場合を調べたものではなく、実際の判断は医療者に相談する話題です。
- 肌の色:400〜1000 nm では濃い肌の吸収が薄い肌をおよそ6〜74%上回り、940 nm を超える波長なら肌の色に左右されない光技術が可能になりうるとされますが、1000 nm 超のデータは限られています[Setchfield 2024]。
参考文献
- Söderberg PG, Talebizadeh N, Yu Z, Galichanin K. Does infrared or ultraviolet light damage the lens? Eye (Lond). 2016;30(2):241-246. DOI: 10.1038/eye.2015.266 / PMID: 26681107
- Ostrin LA, Schill AW. Red light instruments for myopia exceed safety limits. Ophthalmic Physiol Opt. 2024;44(2):241-248. DOI: 10.1111/opo.13272 / PMID: 38180093(本記事が参照したのは PubMed の公開抄録のみです)
- Chen Y, et al. Safety of repeated low-level red-light therapy for myopia: A systematic review. Asia Pac J Ophthalmol (Phila). 2024;13(6):100124. DOI: 10.1016/j.apjo.2024.100124 / PMID: 39672511(本記事が参照したのは PubMed の公開抄録のみです)
- Jiang Y, Zhu Z, Tan X, et al. Effect of Repeated Low-Level Red-Light Therapy for Myopia Control in Children: A Multicenter Randomized Controlled Trial. Ophthalmology. 2022;129(5):509-519. DOI: 10.1016/j.ophtha.2021.11.023 / PMID: 34863776(本記事が参照したのは PubMed の公開抄録のみです)
- Glass GE. Photobiomodulation: A Systematic Review of the Oncologic Safety of Low-Level Light Therapy for Aesthetic Skin Rejuvenation. Aesthet Surg J. 2023;43(5):NP357-NP371. DOI: 10.1093/asj/sjad018
- de Pauli Paglioni M, et al. Tumor safety and side effects of photobiomodulation therapy used for prevention and management of cancer treatment toxicities. A systematic review. Oral Oncol. 2019;93:21-28. DOI: 10.1016/j.oraloncology.2019.04.004 / PMID: 31109692
- Setchfield K, Gorman A, Simpson AHRW, Somekh MG, Wright AJ. Effect of Skin Color on Optical Properties and the Implications for Medical Optical Technologies: A Review. J Biomed Opt. 2024;29(1):010901. DOI: 10.1117/1.JBO.29.1.010901