赤色光の機器について、効果より先に気になることが2つあります。目に悪くないか、そして、がんを起こしたり進めたりしないかです。

目については、近視用の赤色光機器を3分見つめ続けると、安全基準の上限を超えるという計算があります。一方で、実際に使った人の症状を集めた報告では、元に戻らない障害は確認されていません。がんについては、美容目的で皮膚に当てた研究を集めた分析で、光をがんの発生や再発と結びつける報告はなく、がん治療の副作用ケアに使った研究の分析でも、ほとんどの研究で副作用はありませんでした。

目に向けた機器の報告

ここで扱う報告は3つで、どれも目を直接照らして近視を抑える「近視用の赤色光機器」についてのものです。肌に当てるパネルを目に向けた研究は、この記事の出典にはありません。

1つ目は、市販の近視用機器2種の光の強さを実際に測った論文です。3分間見つめ続けると、網膜(目の奥で光を受け取る膜)が受けてよい光の上限に、どちらの機器も達するか超えると計算しました[Ostrin 2024]。この上限は安全基準が引いた線で、実際に目を傷めた人を数えた話ではありません。線を超えたという計算と、使った人に何が起きたかは、別の報告です。日本の眼科で使われている機器を測った報告は、この記事の出典にはありません。

2つ目は、この機器を使った人の症状を集めた分析です。いちばん多かったのは残像で、6分以内に消えました。視力が下がって目の奥の検査に異常が出た報告が2件ありましたが、使うのをやめて4か月後に完全に回復しました。元に戻らない障害は確認されていません[Chen 2024]。

3つ目は、8〜13歳の子ども264名が、1回3分・1日2回・週5日を12か月続けた試験です。眼鏡だけの子どもと比べて、重い有害事象はありませんでした[Jiang 2022]。

3つの報告をまとめると、見つめ続ける条件では安全基準の線を超える計算があり、実際に使った人の報告では、元に戻る症状までです。

報告条件結果
機器2種の光を実測[Ostrin 2024]市販の近視用機器2種。3分続けて見つめた場合を計算どちらも上限に達するか超えた
使った人の症状を集めた分析[Chen 2024]近視用の赤色光機器を使った人の報告残像は6分以内に消えた。視力低下2件は4か月後に回復。元に戻らない障害なし
子ども264名の12か月の試験[Jiang 2022]650 nm(nm は波長の単位)・1回3分・1日2回・週5日・自宅で親が見守る。眼鏡だけの子どもと比べた重い有害事象なし

がんについての報告

ここで扱う分析は2つです。

1つ目は、美容目的で皮膚に光を当てた研究57件を集めた分析です。57件の大部分は細胞の実験(41件)と動物の実験(9件)で、人の試験は7件です。細胞では、健康な細胞は増える速さが高まったものの、細胞の形や並びががんに近づく変化は起きませんでした。がん細胞では、実験によって結果が違いました。光を当てると増えにくくなった実験もあれば、変わらなかった実験も、増えやすくなった実験もあり、光の条件で結果が変わりました。光を当てたあとに死なずに残る細胞の割合は、減るか変わらないかがほとんどで、残りは光の量や波長で結果が変わりました。増えやすさと生き残りは、別々の実験で数えたものです。動物に植えた腫瘍の大きさを測った6つの実験では、4つで小さくなるか変わらず、2つで大きくなりました。人の試験7件では、一時的な赤みが計4名に出ただけで、他の有害事象も、がんの発生や再発と結びつく報告もありませんでした[Glass 2023]。

2つ目は、がん治療の副作用のケアに光を使った27件を集めた分析です。副作用とは、口の中の炎症、リンパのむくみ、放射線による皮膚炎、手足のしびれです。この分析が調べたのは、光が体に残ったがん細胞を刺激して、再発や新しいがんを増やさないかです。ほとんどの研究で副作用はありませんでした[Paglioni 2019]。

2つの分析をまとめると、細胞と動物の実験では光の条件によって結果が違い、人では、美容目的の7件に赤み以外の有害事象がなく、副作用ケアの27件もほとんどで副作用がありませんでした。

報告条件結果
美容目的の皮膚の研究57件の分析[Glass 2023]赤色光 625〜700 nm と近赤外光 700〜1100 nm。細胞41件・動物9件・人の試験7件人の試験7件は一時的な赤み計4名のみ。がんと結びつく報告なし
がん治療の副作用ケアの27件の分析[Paglioni 2019]口の中の炎症・リンパのむくみ・放射線による皮膚炎・手足のしびれのケアほとんどの研究で副作用なし

著者の結論と、次の課題

目の機器を測った著者らは、安全基準が確認されるまで、子どもへの近視用の赤色光療法の使用には慎重であるべきだとしています[Ostrin 2024]。

美容目的の分析の著者は、皮膚への使用はがんに関して安全だといまの研究は示唆しており、がんの治療歴がある人が避けるべきだとする根拠は見当たらない、と結論しています。動物で腫瘍が大きくなった2つの実験は、光の量が通常よりはるかに多いか、免疫の働かないマウスを使ったもので、免疫が正常な動物では光が腫瘍の成長を高めることはおそらく無い、と読んでいます。人の試験で有害事象が報告されていないことも、その根拠です[Glass 2023]。

副作用ケアの分析の著者らは、この使い方ががんの再発や新しいがんの発生につながらないことを、いまある文献は示唆していると述べています[Paglioni 2019]。

次の課題として著者らが挙げるのは、目では機器の安全基準の確認、がんでは多くの施設が参加する大規模な試験です[Ostrin 2024][Glass 2023]。

参考文献