レッドライトセラピーの光は、量を増やしても結果がよくなるとは限りません。同じ量でも、強い光を短く当てるか弱い光を長く当てるかで、結果が変わりました。まず、マウスの傷は、いちばん多い量で、光を当てなかったマウスより広がりました。次に、ラットの膝は、同じ量でも強い光を1分だけ当てた条件で、光を当てなかったラットと変わりませんでした[Huang 2009]。そして、健康な高齢者では、量を2倍にした人のほうが記憶の課題の成績が低い結果でした[Lee 2024]。

この記事に出てくる強さ・量・時間などの照射条件は試験のもので、機器の使い方の目安ではありません。

光の量は強さと時間の掛け算

光の強さは、肌1平方センチメートルに毎秒届く光のエネルギーで、単位は mW/cm²(ミリワット毎平方センチメートル)です。光の量は、強さに当てた時間を掛けたもので、単位は J/cm²(ジュール毎平方センチメートル)です。

量(J/cm²)= 強さ(mW/cm²)× 時間(秒)÷ 1000

例:100 mW/cm² × 10秒 ÷ 1000 = 1 J/cm²

1000 で割るのは、ミリワットをワットに直すためです。時間が分のときは、60 を掛けて秒にします。同じ強さなら、時間が長いほど量は増えます。電球の「100 W」は電気の消費量で、この記事の mW/cm² とは別のものです。

マウスの傷はいちばん多い量で逆に広がった

2009年の論文の著者らは、マウスの背中の皮膚を切り取って傷を作り、30分後に1回だけ光を当てました。光はランプから出した 635 nm(ナノメートル。光の波長の単位)前後の光で、目に見える範囲(400〜700 nm)に入ります。この論文によると、レッドライトセラピーで使う光は、ふつう 600〜1000 nm の赤色光と近赤外光です。強さはどれも 100 mW/cm² で、当てる時間を 10・20・100・500秒と変えて、量を4段階にしました。

比べる相手は、光を当てなかったマウスです。この実験の傷は、光を当てないと、はじめの2〜3日は広がる傾向があります。傷の大きさを日を追って測ると、傷の広がりは 1・2・10 J/cm² で小さく、2 J/cm² でいちばん小さくなりました。50 J/cm² では、逆に大きくなりました[Huang 2009]。

表の太字は、光を当てても結果がよくならなかった条件です。

量当てた時間傷の広がり(光を当てなかったマウスと比べて)
1 J/cm²10秒小さかった
2 J/cm²20秒いちばん小さかった
10 J/cm²100秒小さかった
50 J/cm²500秒大きかった

ラットの膝は同じ量でも強さと時間で変わった

同じ2009年の論文の著者らは、炎症を起こす物質を膝に注射したラットに、810 nm のレーザーの光を5日間、毎日当てました。810 nm は、同じ範囲に入りますが、目には見えません。量は 3 J/cm² と 30 J/cm² の2段階、強さは 5 mW/cm² と 50 mW/cm² の2段階で、組み合わせは4通りです。同じ量を、強い光で短く当てるか弱い光で長く当てるかで、毎日当てた時間は1分・10分・100分になります。

マウスの傷ラットの膝
強さ1つ(100 mW/cm²)2つ(5 と 50 mW/cm²)
量4段階(1・2・10・50 J/cm²)2段階(3 と 30 J/cm²)
時間10・20・100・500秒1分・10分・100分(10分は2通り)

比べる相手は、光を当てなかったラットです。炎症を抑えるステロイド薬を使ったラットも相手に入れています。腫れた膝の太さを毎日測りました。腫れは、1分だけ当てた組み合わせでは減らず、ほかの3通りでは減りました。

量強さ毎日当てた時間膝の腫れ(光を当てなかったラットと比べて)
3 J/cm²5 mW/cm²10分減った
3 J/cm²50 mW/cm²1分減らなかった
30 J/cm²5 mW/cm²100分減った
30 J/cm²50 mW/cm²10分減った

腫れが減った3通りは、減り方がステロイド薬を使ったラットとほぼ同じでした。著者らは、この結果から、当てる時間が大事な条件になる場面がある、と提案しています。

健康な高齢者は2倍の量のほうが記憶の成績が低かった

2024年の論文では、香港の研究グループが、健康な高齢者88人の頭に光を1回当てました。44人は 10.8 J/cm²、残りの44人はその2倍の 21.6 J/cm² を当て、この2つを比べました。強さはどちらも 30 mW/cm² です。

研究グループは、難しい記憶の課題のあいだに脳の血液の酸素がどう変わるかを、頭の外から測りました。著者らは、この変化を、脳の働きの効率の目安にしています。2倍の量(21.6 J/cm²)を当てた人のほうが、効率の目安の改善が小さく、記憶の課題の成績も低い結果でした[Lee 2024]。

確かめられた範囲と2009年の論文の説明

ここまでの結果は、傷を作ったマウスに1回、炎症を起こしたラットに5日間、健康な高齢者の頭に1回、光を当てたものです。「量を増やせば結果もよくなるはずだ」という想定について、2009年の論文の著者らは、しばしば成り立たない、と書いています。

著者らは、光の量と改善の関係を、次の型で説明しています。量が少なすぎると、何も起きません。ある量を超えると、改善が出ます。多すぎると、改善は消えて、逆に悪くなります。

同じ量でも、強さを2倍にして時間を半分にすると、結果はしばしば違う、とも書いています。マウスの傷では、傷の広がりが小さくなった 1・2・10 J/cm² が「改善が出る量」に、逆に広がった 50 J/cm² が「多すぎる量」にあたります[Huang 2009]。

参考文献