家庭用のLEDマスクやパネルを調べていると、製品ごとに書いてある数字がばらばらで、比べようがないと感じることがあります。この記事で扱うのは「どれを買うか」ではありません。スペック表のどの数字を見て、研究で使われた条件とどう照らし合わせるかという読み方です。美容分野の研究全体の見取り図は赤色光と美容の全体地図にまとめています。

突き合わせる数字は4つ

研究論文が照射条件を書くとき、たいてい次の4つが並びます。

照度と照射量の関係は用量の考え方で扱いました。製品のスペック表も、この4つのうちどれが書かれていて、どれが書かれていないかという目で読むと、研究と同じ土俵に乗せやすくなります。

波長——「赤色光」の区切りは総説によって違う

まず波長です。「赤色光」という言葉が指す範囲は、文献によって一致していません。

Guo と Yuan の2025年の総説は、LEDの波長帯を青(400〜470 nm)、黄(570〜590 nm)、赤(630〜760 nm)、近赤外(760〜1200 nm)と区切っています[Guo 2025]。一方、Mineroff らの2024年の皮膚科向け総説は、赤色光を620〜700 nm、近赤外を700〜1440 nm としています[Mineroff 2024]。

「赤色光LED搭載」という表記だけでは、それが630 nm なのか700 nm 近くなのかは分かりません。スペック表に具体的な nm の数値があるかどうかが、最初の分かれ目になります。

肌を対象にした臨床研究で実際に使われた波長は、611〜650 nm[Wunsch 2014]、630±10 nm[Couturaud 2023]、660±10 nm[Bragato 2025]でした。中心波長で見ると、630〜660 nm あたりに集まっています。

照度と時間はセットで読む

次は照度と時間です。この2つは切り離せません。照射量(J/cm²)は、照度(mW/cm²)と時間の積で決まるからです。

Bragato らが2025年に報告した試験では、660±10 nm のLEDマスクを、照度 6.4 mW/cm²、照射量 8.05 J/cm²、1回21分という条件で使っています[Bragato 2025]。Wunsch と Matuschka の2014年の試験では、611〜650 nm の赤色光を、照度 6〜13 mW/cm²、照射量 9〜17 J/cm²(解析ではおよそ 9 J/cm² に揃えられています)、1回12〜25分で当てています[Wunsch 2014]。

同じ赤色光でも、片方は21分、もう片方は12〜25分と幅があります。目的が違うからではありません。照度が違えば、同じ照射量に届くまでの時間が変わるからです。Couturaud らの2023年の研究では、630±10 nm のLEDマスクで、照射量 15.6 J/cm²、1回12分という条件が使われました[Couturaud 2023]。この試験の詳しい内容はしわの臨床研究の条件で扱っています。

そのため、「1回○分」という時間だけを製品どうしで比べても意味がないことになります。時間は照度とセットで読みます。

頻度——回数を増やした群と比べた試験

スペック表に「毎日使えます」と書かれていることがあります。ただ、これは使ってよいかどうかの話です。研究で何回当てたかとは別になります。

Bragato らの試験は、45〜60歳の女性95名を対象にした二重盲検試験です[Bragato 2025]。週3回(計12回)当てる群、週2回(計8回)当てる群、偽の光(シャム)を週2回当てる対照群に分け、4週間続けました。しわ評価尺度(WAS)では、群の間に有意差はありませんでした。眉間と右目周のしわの長さでは、光を当てた2群が対照群に比べて有意に減ったと報告されています(p<0.001)。満足度は週3回で79.6%、週2回で73.4%でした。著者らは、回数を増やしても結果は有意には変わらず、満足度の改善であれば週2回で足りそうだとまとめています。

「多いほど効く」わけではない

光の量には、適した範囲があります。Huang らは2009年の総説で、少量の光のほうが多量の光より組織の修復を促す二相性の用量反応(Arndt-Schulz 曲線)をまとめています[Huang 2009]。

Zein らの2018年の総説は、波長・エネルギー・照射量・出力・照度・パルス・照射時間・反復回数という多くのパラメータの幅が、研究結果のばらつきを生んでいると指摘しています。そのうえで、ミトコンドリアの多い細胞でうまくいかなかった研究は、量が足りなかったというより過剰だった場合のほうが多かったと述べています[Zein 2018]。スペック表の数字が大きいことは、それだけでは判断材料になりません。

スペック表からは読み取れないこと

製品側の数字だけでは埋まらない部分が、3つあります。

肌の色。Setchfield らの2024年のレビューは、公開されている生体内の測定値を、フィッツパトリック皮膚タイプ別にまとめています。色の濃い肌の吸収係数は、薄い肌をおよそ6〜74%上回る(400〜1000 nm)と報告しています。940 nm を超える波長では、肌の色による差が小さくなる可能性も示しています。ただし、1000 nm を超える領域のデータは限られるとも書いています[Setchfield 2024]。

光源の種類。Glass は2021年の総説で、質の高い研究の多くはレーザー光源を使っており、LED光源が同等の性質と大きさの生理的作用を起こすかは明らかでないと述べています。あわせて、この分野は消費者向けの機器として商業化が先行しているとも指摘しています[Glass 2021]。

使い方と期待値。Mineroff らは、この方法が非侵襲で、安全性も良好だとしています。そのうえで、家庭用機器では安全性と期待値の管理、つまり適切な使い方を伝えることが大切だと述べています[Mineroff 2024]。目・がん・肌の色について研究が何を報告しているかは、レッドライトセラピーの安全性にまとめています。

この記事のまとめ


参考文献