細胞の中でエネルギーを作る場所(ミトコンドリア)に、シトクロムc酸化酵素という酵素があります。赤色光を受け取るのはこの酵素だ、と実験の著者らは考えています。この酵素を毒で止めて赤色光を当てた実験が2つあり、どちらでも、光を当てると毒の害が小さくなりました[Wong-Riley 2005][Eells 2003]。
神経細胞の実験では、毒の前に赤色光を当てておくと、死ぬ細胞が減りました。毒が薄いときは、酵素の働きが途中まで戻り、エネルギーの量も戻りました[Wong-Riley 2005]。ラットの実験では、毒で落ちた目の網膜の働きが、光を当てたラットのほうが保たれていました[Eells 2003]。
この記事に出てくる強さ・量・時間などの照射条件は試験のもので、機器の使い方の目安ではありません。
2つの実験の中身は、次の表のとおりです。表と本文の nm(ナノメートル)は、光の色を表す波長の単位です。
| 毒で弱らせた神経細胞の実験[Wong-Riley 2005] | ラットの目の実験[Eells 2003] | |
|---|---|---|
| 対象 | 生まれて1〜3日のラットの脳から取り出して育てた神経細胞 | ラット |
| 毒 | シアン化カリウム(青酸カリ) | メタノール(体の中でギ酸という毒に変わる) |
| 光 | 670 nm。死ぬ細胞を数えた実験では毒の前に10分を1回、酵素とエネルギーを測った実験では毒を加えた5日間に1日2回1分20秒 | 670 nm をメタノールの5・25・50時間後に1回2分24秒 |
| 結果 | 死んだことを示す形の細胞が 83.6% から 43.47% に減った。薄い毒では酵素の働きが途中まで戻り、エネルギーの量も戻った | 網膜の電気の反応が、メタノールだけでは約28%、光を当てると72%(何もしないラットを100%として) |
神経細胞では光で死ぬ細胞が減った
生まれて1〜3日のラットの、脳の視覚の部分から取り出して育てた神経細胞に、シトクロムc酸化酵素を止める毒(シアン化カリウム=青酸カリ)を加え、670 nm の赤色光を当てました。やり方は2通りです。死ぬ細胞を数えた実験では、毒を加える前に光を10分当てました。酵素とエネルギーを測った実験では、毒を加えている5日間に光を1日2回当てました[Wong-Riley 2005]。
毒を28時間加えると、83.6% の細胞で、死んだことを示す形(核が縮んで固まった形)が見られました。毒の前に光を10分当てておくと、その割合は 43.47% でした。毒も光も加えなかった細胞では 4.75% です。
薄い毒を5日加え、その間に光を1日2回当てると、酵素の働きは途中まで戻りました。エネルギーの量(ATP。細胞が使うエネルギーのもと)が戻ったのは、いちばん薄い毒のときだけです。
毒が濃くなると、光を当てても守られる細胞は少なくなり、死ぬ細胞が増えました。
ラットでは毒が残っても網膜の働きが保たれた
ラットにメタノールを与えました。メタノールは体の中でギ酸という毒に変わり、同じ酵素を止めて、目の網膜(目の奥で光を受け取る膜)を弱らせます。そこに 670 nm の光を3回(メタノールの5・25・50時間後に、1回2分24秒)当てました[Eells 2003]。
網膜が光に反応して出す電気の大きさを測ると、メタノールだけのラットでは、何もしないラットの約28%に落ちました。光を当てたラットでは72%でした。網膜の形も、光を当てたラットでは、何もしないラットと見分けがつかないほど保たれていました。
血液の中のギ酸の量は、光を当てても当てなくても同じでした。光が毒を減らしたわけではありません。
2つの実験から言えること
2つとも、同じ酵素を毒で止めた実験です。著者らは、光がこの酵素の働きを高めることで、毒で弱った神経細胞のエネルギー作りを助ける、という考えに合う結果だとしています[Wong-Riley 2005]。
参考文献
- Wong-Riley MTT, Liang HL, Eells JT, Chance B, Henry MM, Buchmann E, Kane M, Whelan HT. Photobiomodulation directly benefits primary neurons functionally inactivated by toxins: role of cytochrome c oxidase. J Biol Chem. 2005;280(6):4761-4771. DOI: 10.1074/jbc.M409650200
- Eells JT, Henry MM, Summerfelt P, Wong-Riley MTT, Buchmann EV, Kane M, Whelan NT, Whelan HT. Therapeutic photobiomodulation for methanol-induced retinal toxicity. Proc Natl Acad Sci U S A. 2003;100(6):3439-3444. DOI: 10.1073/pnas.0534746100