肌の老化には、年齢そのものによる変化のほかに、紫外線を浴び続けることで進む変化があります。後者は光老化(ひかりろうか)と呼ばれます。赤色光を当てたときに、この紫外線によるダメージがどう変わるのかを調べた研究がいくつか報告されています。ここで取り上げるのは、マウスを使った実験と、皮膚を対象にした総説です。

紫外線が肌に与える変化

太陽光にふくまれる紫外線のうち、UVB と呼ばれる帯域は皮膚の表面近くまで届きます。日焼けや皮膚のダメージに関わることが知られています。長く浴び続けると、肌の弾力を支えるコラーゲンや弾性線維(だんせいせんい、肌を伸び縮みさせる繊維)に影響が及ぶと考えられています。

紫外線を浴びる前に赤色光を当てた実験

Cho らは2024年に、毛のないマウス(Skh:HR-1 ヘアレスマウス、雄、5週齢)を使って、赤色光と紫外線の関係を調べました。なお、マウスの系統名は論文のなかで表記が分かれています。題名では SKH:HR-2、方法の記載では Skh:HR-1 です(この記事は方法の記載に従います)。マウスは4つのグループに分けられました。何もしない対照群、紫外線だけを当てる群、赤色光だけを当てる群、そして赤色光を当てたうえで紫外線も当てる群です。

赤色光には630 nm(ナノメートル、光の波長の単位)の LED を使い、1回30分を1日2回、5日間続けました。紫外線は UVB を200 mJ/cm²(ミリジュール毎平方センチメートル、当てた光の量を表す単位)で、1日1回、3日間当てました。順番は、紫外線を当てる前に赤色光を当てる形です。

Cho らは、紫外線を当てる前に赤色光で処置しておくと、紫外線だけを当てた場合より皮膚の形や組織の状態が良好だったと報告しています。組織を詳しく調べると、赤色光で前処置したグループではコラーゲンと弾性線維の質が高まっていたとされています。

あわせて、皮膚のバリアや酸化ストレス(体の中で細胞を傷つける反応)に関わるタンパク質の量にも違いがありました。赤色光を当てたグループでは、皮膚のバリアに関わる Claudin-1 というタンパク質が増える傾向にありました。ただし、統計的に有意な差ではありません。酸化ストレスへの防御に関わる Nrf-2 と HO-1 というタンパク質は、増えていたと報告されています。Cho らは、この Nrf-2/HO-1 という抗酸化のはたらきが活性化(上方調節)されたことで、酸化ストレスによる障害が和らいだと解釈しています。そのうえで、赤色光は皮膚を守る遺伝子のはたらきを通じて、紫外線ダメージへの抵抗力を高めうると書いています。

なお、これはマウスを対象にした実験です。人でも同じことが起きるかどうかは、この研究だけからは分かりません。

皮膚の総説での位置づけ

Avci らも2013年の皮膚に関する総説で、赤色光や近赤外光を使う光生体調節(Photobiomodulation、光を当てて細胞のはたらきを整える方法)が紫外線によるダメージを軽減しうるとまとめています。この総説は、そうした光がすでに受けたダメージへの対応としても、あらかじめ当てておく予防としても、UV 損傷を減らしうるとしています[Avci 2013]。

総説は、個々の実験結果を集めて全体像を整理したものです。Cho らのマウス実験も、この総説が示す方向と重なる報告のひとつです。

この記事のまとめ


参考文献