赤色光を肌に当てると、肌の中で何が起きるのでしょうか。
まず、光は色(波長)によって、肌のどこまで届くかが違います。赤色光は、目に見える光の中でいちばん深く、真皮(表皮の下の層)まで届きます。次に、届いた光を受け取るのは、細胞の中でエネルギーを作る場所(ミトコンドリア)にある酵素です。この酵素が光を受け取ったあと、細胞で何が起きるかは、研究者が仮説として説明している段階です。そして、人の肌で確かめられているのは、光を当てた人の真皮でコラーゲンの密度が増えたことです。この3つを順に説明します。出典は、ほかの研究をまとめた論文が3つと、人の肌で測った試験が1つです。
波長によって届く深さが違う
皮膚は、外側の表皮と、その下の真皮に分かれます。光がどちらの層まで届くかは、光の色で違います。これを書いているのは2つの論文です。
2025年の論文は、美容皮膚科で使う LED の光を、色ごとに分けて説明しています[Guo 2025]。青色光(400〜470 nm。nm はナノメートルという光の波長の単位)は、およそ 1 mm の深さまで入り、主に表皮に働きます。黄色光(570〜590 nm)は真皮に達します。赤色光(630〜760 nm)のうち 630〜700 nm は、目に見える光の中で最も深く入り、真皮全体に届きます。近赤外光は 760〜1200 nm です。
2013年の論文は、皮膚への光の治療をまとめたもので、波長を2つに分けています[Avci 2013]。390〜600 nm の光は浅いところに、600〜1,100 nm の光はさらに深く入るので、深いところの治療に使われます。波長が長いほど、深くまで届きます。
| 波長帯 | 届く深さ |
|---|---|
| 青色光 400〜470 nm | およそ 1 mm。主に表皮[Guo 2025] |
| 黄色光 570〜590 nm | 真皮に達する[Guo 2025] |
| 赤色光 630〜760 nm | 630〜700 nm は目に見える光の中で最も深く、真皮全体に届く[Guo 2025]。700〜760 nm は「さらに深く入る」600〜1,100 nm の中[Avci 2013] |
| 近赤外光 760〜1200 nm | 600〜1,100 nm の光として「さらに深く入り、深いところの治療に使われる」[Avci 2013]。何 mm かは出典にない |
光を受け取るのは何か
皮膚の細胞に届いた赤色光と近赤外光は、細胞の中でエネルギーを作る場所(ミトコンドリア)にある分子に吸収されます。その中心が、シトクロム c 酸化酵素という酵素です。細胞が酸素を使ってエネルギーを作る反応を受け持つ酵素です[Avci 2013]。
光を受け取ったあとに何が起きるかは、こう説明されています。シトクロム c 酸化酵素には、一酸化窒素という小さな分子がくっついて、酸素が入る席をふさいでいます。光を吸収すると、この一酸化窒素が酵素から外れます。席が空いた酵素はよく働き、細胞がエネルギーとして使う物質(ATP)が増える、という説明です。2013年の論文はこれを仮説として書き[Avci 2013]、2017年の論文は、いちばん支持されている説明だとしています[Hamblin 2017]。
光を受け取るのは、この酵素だけではありません。2017年の論文はもう1つ、細胞にカルシウムを通す通り道を挙げています。この通り道は、オプシンというタンパク質が光を吸収し、その仲立ちで反応する可能性がある、としています[Hamblin 2017]。2025年の論文も、オプシンとクリプトクロム(どちらも光を受け取るタンパク質)を挙げています[Guo 2025]。
酵素が働いたあと、細胞の中では次のことが順に起きる、と2017年の論文は書いています。ATP が増え、酵素から外れた一酸化窒素が増え、活性酸素(酸素からできる、反応しやすい分子)が短い時間だけ増え、カルシウムの量が調節されます。すると、遺伝子の働きを切り替えるタンパク質(転写因子)が広く働き、細胞は生き残りやすく、増えやすく、動きやすくなり、新しいタンパク質を作ります[Hamblin 2017]。2025年の論文は、光を受け取ったあとの変化として、細胞の増殖と分化、コラーゲン合成の促進、炎症の調節を挙げています[Guo 2025]。
線維芽細胞とコラーゲン
真皮には、コラーゲンを作る線維芽細胞という細胞があります。年齢を重ねた皮膚では、コラーゲンの量が減っています[Avci 2013]。赤色光がこの細胞にどう働くかについて、2025年の論文は、反対のことを2つ書いています[Guo 2025]。1つは、線維化(傷あとが盛り上がるように、組織が硬くなること)を抑える働きです。赤色光は、人の真皮の線維芽細胞が増えること・コラーゲンを作ること・移動することの3つを減らし、それによって線維化を抑えます。もう1つは、紫外線で傷んだ肌(光老化)での働きです。赤色光を当てると、コラーゲンと、細胞の増殖を促す物質(成長因子)が作られる量が増え、コラーゲンなどを分解する酵素が減ります。つまり、コラーゲンが作られすぎて組織が硬くなる場面では抑える方向に、紫外線で傷んだ肌では増やす方向に働く、というのがこの論文の書き方です。何が向きを分けるのかは、この記事の出典には書かれていません。
人の肌で実際に測った試験は1つです。赤色光と肌のしわで扱っている2014年の試験です[Wunsch 2014]。27〜79歳の136名が参加し、うち23名は光を当てずに比べる相手になりました。当てた光は、611〜650 nm の赤色光か、570〜850 nm まで幅のある光で、週2回、計30回です。真皮のコラーゲンの密度を、開始前と30回後に超音波で測りました。赤色光を当てた人でも、幅のある光を当てた人でも、30回後のコラーゲンの密度は開始前より増えていました。光を当てなかった23名では変わりませんでした。当てた人と当てなかった人のこの違いは、偶然では説明しにくい差です。2つの光の間には、差は出ませんでした。
この仕組みから言えること
真皮まで届くのは赤色光と近赤外光で、青色光は表皮までです。届いた光をミトコンドリアの酵素が受け取るところまでは特定されていて、そのあと細胞で何が起きるかは、いちばん支持されている説明でも仮説の段階です。2013年の論文の著者らも、光が細胞を刺激する仕組みはまだ完全には理解されていない、と書いています[Avci 2013]。人の肌で確かめられているのは、光を当てた人の真皮でコラーゲンの密度が増えたことです。しわなど見た目の変化は、赤色光と肌のしわで扱っています。
光は多いほどよいわけではありません。量と結果の関係は、用量の考え方で扱っています。この記事の出典では、2017年の論文の著者が、光の量が少ないとここまでの反応を刺激し、多いと抑える、という二相性(量によって向きが変わること)が顕著だ、と書いています[Hamblin 2017]。
参考文献
- Guo Z, Yuan K. The Application of Light Emitting Diode (LED) in Cosmetic Dermatology. Photodermatol Photoimmunol Photomed. 2025;41(1):e70041. DOI: 10.1111/phpp.70041
- Avci P, Gupta A, Sadasivam M, Vecchio D, Pam Z, Pam N, Hamblin MR. Low-level laser (light) therapy (LLLT) in skin: stimulating, healing, restoring. Semin Cutan Med Surg. 2013;32(1):41-52. PMID: 24049929
- Hamblin MR. Mechanisms and applications of the anti-inflammatory effects of photobiomodulation. AIMS Biophys. 2017;4(3):337-361. DOI: 10.3934/biophy.2017.3.337
- Wunsch A, Matuschka K. A controlled trial to determine the efficacy of red and near-infrared light treatment in patient satisfaction, reduction of fine lines, wrinkles, skin roughness, and intradermal collagen density increase. Photomed Laser Surg. 2014;32(2):93-100. DOI: 10.1089/pho.2013.3616