レッドライトセラピー(赤色光療法、学術的には Photobiomodulation=光生体調節)が調べられてきた対象のひとつが、ニキビ(尋常性ざ瘡)です。この分野では、赤色光だけでなく、青色光と組み合わせた条件でも研究が行われてきました。この記事で取り上げるのは、家庭用のLED装置を使った二重盲検試験です。誰を対象に、どんな条件で、何を測り、どこまでを報告したのかをたどります。肌への応用全体の見取り図は美容の全体地図にまとめています。
青色光と赤色光では、届く深さが違う
Guo と Yuan が2025年に発表したLED美容皮膚科の総説は、波長を4つの帯に分けています。青色(400〜470 nm。nm はナノメートルという光の波長の単位です)、黄色(570〜590 nm)、赤色(630〜760 nm)、近赤外(760〜1200 nm)です[Guo 2025]。
このうち青色光は、皮膚の約1 mmの深さまで届き、主に表皮を標的とすると説明されています。総説によれば、ニキビの発症にはグラム陽性菌である Propionibacterium acnes が重要な役割を果たします。青色光がもともとある色素(内因性ポルフィリン)を光で活性化させ、そこで生じる反応が細菌の細胞膜を傷つける——この機序を示したのは試験管内(in vitro)の研究だと、総説は書いています[Guo 2025]。
一方の赤色光(この節では 630〜700 nm。同じ総説でも、節によって区切りが少し変わります)は、可視光のなかで最も深くまで届き、真皮全体に達しうるとされています[Guo 2025]。光が皮膚の細胞で何をしていると考えられているかは、しくみの解説で扱っています。
青色と赤色では、届く深さも、想定されている役割も違います。次に取り上げる試験は、この2つを組み合わせた条件で行われたものです。
Kwon らによる2013年の二重盲検試験
韓国・ソウル大学校医科大学皮膚科の Kwon らは2013年、家庭用LED装置を使ったランダム化比較試験を British Journal of Dermatology に報告しました[Kwon 2013]。
対象者——軽度〜中等度のニキビ(尋常性ざ瘡)をもつ韓国人患者35名です。
条件——参加者は、実際に光の出る装置を使うグループと、シャム(偽)装置を使うグループに振り分けられました。試験は二重盲検で、患者にも評価する側にも、どちらの装置かは伏せられています。本物の装置からは、420 nm の青色光と 660 nm の赤色光が出ます。使用は1回2.5分、1日2回、4週間。評価は12週の時点で行われました。照射条件の数字そのものの読み方は、用量の考え方で説明しています。
測られたもの——炎症性病変(赤く腫れたもの)と非炎症性病変(白ニキビ・黒ニキビ)の数の変化です。あわせて、皮膚を採取して顕微鏡で調べる組織学的な検査も行われました。
報告された結果——12週の時点で、光を当てたグループでは炎症性病変が77%、非炎症性病変が54%減り、対照グループには有意な変化がなかったと報告されています。組織学的な検査では、皮脂腺が小さくなり、炎症にともなって集まる細胞の浸潤が減り、IL-8・IL-1α・SREBP-1 という炎症に関わる複数の分子で発現が下がったと書かれています。安全性が示され、患者の遵守率(決められたとおりに使えた度合い)も良好だったとされています。
この試験を読むときの限界
数字は大きく見えますが、いくつか注意したい点があります。
- 人数——35名です。小規模な試験で観察されたことが、より大きな試験で同じように再現されるとは限りません。
- 対象——軽度〜中等度のニキビをもつ韓国人の患者が対象です。それ以外の程度や集団について、この試験から言えることはありません。
- 期間——光を当てたのは4週間で、評価は12週の時点です。それより長い期間に何が起きるかは、この試験の範囲外です。
- 切り分け——試したのは青色光と赤色光を組み合わせた条件です。どちらか一方だけを当てるとどうなるかは、この試験では調べられていません。
対照群を置いた二重盲検という設計そのものは、思い込みの影響を減らすうえで質の高い部類に入ります。ただ、規模が小さく条件も限られる以上、結果を当てはめられる範囲はその分だけ狭くなります。
この記事で条件まで具体的に追えるヒト試験は、この Kwon らの1本だけです。ニキビに光を当てる臨床試験はほかにもあり、それらをまとめて扱っているのが次の総説です。
総説は、この領域をどう位置づけているか
Glass は2021年に、低出力光療法(LLLT)の臨床応用を扱った総説を発表しました。対象は、皮膚の若返り、尋常性ざ瘡、創傷治癒、ボディコンタリング、男性型脱毛症の臨床文献です。ニキビを含むいくつかの領域には、低エネルギーの赤色・近赤外光を支持する臨床試験エビデンスが相応の量あると述べています。ただ、方法論上の欠陥、患者集団の小ささ、業界資金による研究といった問題もあり、エビデンスの質を高める余地は大きいとも指摘しています。LED光源がレーザーと同等の性質・大きさの生理的効果をもたらすのかどうかも、依然として分かっていないと書いています[Glass 2021]。
Avci らの2013年の皮膚科総説も、乾癬やニキビのような炎症性の疾患は低出力光療法から有益な効果を受けうるとまとめています。非侵襲であること、副作用がほぼ完全に見られないことが、皮膚科でのさらなる検討を後押しするとも述べています[Avci 2013]。
Guo らの総説は、波長の違うLEDを組み合わせると、ニキビ・光老化・創傷修復といった条件での療法的アウトカム(測定される結果)が上がるとも指摘しています[Guo 2025]。Kwon らの試験が青色と赤色の併用だったことは、この流れのなかに位置づけられます。
読むときの前提
ここで紹介したのは、特定の条件で行われた研究が何を測り、何を報告したかです。一人ひとりの症状にどう対処すればよいかを示すものではありません。ニキビは、程度や状態によっては医療機関で扱われます。一般的な情報として、相談先には皮膚科があります。
この記事のまとめ
- 青色光(400〜470 nm)は約1 mmの深さまで届いて主に表皮を標的とし、赤色光(630〜700 nm)は可視光のなかで最も深くまで届くと総説はまとめています[Guo 2025]。
- Kwon ら(2013)は、軽度〜中等度のニキビをもつ韓国人患者35名で、420 nm 青色光+660 nm 赤色光の家庭用LED(1回2.5分、1日2回、4週間)とシャム装置を比べる二重盲検試験を行いました[Kwon 2013]。
- 12週の時点で、光を当てたグループでは炎症性病変が77%、非炎症性病変が54%減り、対照グループには有意な変化がなかったと報告されています[Kwon 2013]。
- ただし35名という規模、対象の限定、4週間の介入、青色と赤色を分けていない設計は、結果を当てはめられる範囲を狭めます。
- 総説の側でも、この領域の臨床エビデンスには方法論上の欠陥や集団の小ささといった課題があり、LEDとレーザーが同等かは不明とされています[Glass 2021]。
参考文献
- Kwon HH, Lee JB, Yoon JY, Park SY, Ryu HH, Park BM, Kim YJ, Suh DH. The clinical and histological effect of home-use, combination blue-red LED phototherapy for mild-to-moderate acne vulgaris in Korean patients: a double-blind, randomized controlled trial. Br J Dermatol. 2013;168(5):1088-1094. DOI: 10.1111/bjd.12186
- Guo Z, Yuan K. The Application of Light Emitting Diode (LED) in Cosmetic Dermatology. Photodermatol Photoimmunol Photomed. 2025;41(1):e70041. DOI: 10.1111/phpp.70041
- Glass GE. Photobiomodulation: The Clinical Applications of Low-Level Light Therapy. Aesthet Surg J. 2021;41(6):723-738. DOI: 10.1093/asj/sjab025
- Avci P, Gupta A, Sadasivam M, Vecchio D, Pam Z, Pam N, Hamblin MR. Low-level laser (light) therapy (LLLT) in skin: stimulating, healing, restoring. Semin Cutan Med Surg. 2013;32(1):41-52. PMID: 24049929