レッドライトセラピー(赤色光療法、学術的には Photobiomodulation=光生体調節)は、赤色から近赤外の波長の光を皮膚に当てる方法です。肌への応用として、しわや皮膚のコラーゲンを調べた研究がいくつかあります。この記事では、対象や条件のはっきりした2つの臨床研究を取り上げます。それぞれの研究が何をどう測り、どんな変化を報告したのかを紹介します。
コラーゲンとは何か
コラーゲンは、皮膚の奥の層(真皮)にあるタンパク質です。肌のハリや弾力を支える土台のような役割をしています。年齢とともにこのコラーゲンが減っていき、それがしわやたるみと関係すると考えられています。赤色光の研究には、しわの見た目だけでなく、真皮のコラーゲンの密度を機器で測ったものもあります。
Wunsch と Matuschka による2014年の対照試験
Wunsch と Matuschka は2014年に、136名を対象とした前向きランダム化対照試験を報告しました[Wunsch 2014]。参加者は、光を当てるグループと、光を当てない対照グループ(23名)に分かれました。
光を当てたグループのうち、赤色光(611〜650 nm。nm はナノメートルという光の波長の単位)を使った条件では、照射量をおよそ9 J/cm²(1平方センチあたりのエネルギー量)にそろえています。照射は週2回、合計30回(約15週間)続けられました。
開始前と30回終了後には、臨床写真の撮影、超音波によるコラーゲン密度の測定、皮膚の凹凸を数値化する測定(プロフィロメトリー)などを行いました。評価の一部は、参加者がどのグループかを知らない評価者が担当しました(盲検評価)。
その結果、光を当てたグループでは、肌の感触や色調、測定した皮膚の粗さ、超音波で測った真皮のコラーゲン密度に、対照グループとの差が出たと報告しています。写真の盲検評価でも、光を当てたグループに変化が見られたとしています。
この試験では、赤色だけの光と、より広い波長帯(570〜850 nm)を含む光の両方を比べています。ただ、広い波長帯の光が赤色だけの光を上回る結果は出なかったと書いています。
Couturaud らによる2023年の研究
Couturaud らは2023年に、45〜70歳(平均55.5歳)の健常なコーカサス系女性20名を対象とした研究を報告しました[Couturaud 2023]。この研究に光を当てない対照グループはなく、一人ひとりの使用前と使用後を比べる形です。
使ったのは、630±10 nm の赤色光を出すLEDマスクです。照射量は15.6 J/cm²で、1回12分間、週2回を3ヶ月間続けました。測ったのは、目尻のしわ(カラスの足跡)の深さ、皮膚の硬さと弾力(キュートメーターという機器で測定)、真皮の密度(超音波)などです。
Couturaud らによると、使用から1ヶ月、2ヶ月、3ヶ月と時間がたつにつれて、測定値の変化が進んでいきました。この変化は、使用をやめてから1ヶ月後まで続いていたとされています。
2つの研究の違いを読むときの注意
どちらも赤色光を肌に当てて、しわやコラーゲンを調べた研究です。ただ、2つの性質は異なります。Wunsch と Matuschka の研究は対照グループを置いた比較で、人数も136名と多めです。一方、Couturaud らの研究は20名で、対照グループがありません。使用の前と後を一人ひとりで追う設計です。対照グループのない前後比較では、光以外の要因(測定の時期や生活の変化など)の影響を切り分けにくくなります。結果を読むときに気をつけたい点です。
どちらの研究も、赤色光を肌に当てた条件で、しわの深さや皮膚のコラーゲン密度といった測定値に変化が見られたという報告です。ただ、波長も照射量も期間も研究ごとに違います。そのため、結果をひとまとめには扱えません。
この記事のまとめ
- Wunsch と Matuschka(2014)は136名の対照試験で、赤色光(611〜650 nm、週2回×30回)を当てたグループに、皮膚の粗さや真皮コラーゲン密度の変化を報告しました[Wunsch 2014]。
- 同じ試験では、より広い波長帯を含む光が赤色だけの光を上回る結果は出ませんでした。
- Couturaud ら(2023)は45〜70歳の女性20名を対象に、630±10 nm のLEDマスク(15.6 J/cm²、12分、週2回、3ヶ月)を使い、しわの深さや真皮密度の測定値が時間とともに変化したと報告しました[Couturaud 2023]。
- Couturaud らの研究は対照グループのない前後比較です。光以外の要因の影響を切り分けにくい点に注意が必要です。
参考文献
- Wunsch A, Matuschka K. A controlled trial to determine the efficacy of red and near-infrared light treatment in patient satisfaction, reduction of fine lines, wrinkles, skin roughness, and intradermal collagen density increase. Photomed Laser Surg. 2014;32(2):93-100. DOI: 10.1089/pho.2013.3616
- Couturaud V, Le Fur M, Pelletier M, Granotier F. Reverse skin aging signs by red light photobiomodulation. Skin Res Technol. 2023;29(7):e13391. DOI: 10.1111/srt.13391