レッドライトセラピー(赤色光療法)は、赤色光と近赤外光の弱い光を体に当てる方法です。近赤外光は、赤色光より波長の長い光です[Hamblin 2017]。目には見えません。この方法は、痛みや炎症、傷ややけど、しわやニキビなどを対象に研究されています[Avci 2013]。
赤色光と近赤外光は、細胞でエネルギーを作る酵素に吸収されます[Hamblin 2017][Wong-Riley 2005]。ラットの神経細胞を使った実験では、毒でこの酵素の働きを下げている間に、5つの波長の光を当てました。酵素の働きがもとに戻った波長は、この酵素が吸収しやすい波長と重なっていました[Wong-Riley 2005]。
弱い光で細胞の働きを変える
赤色光と近赤外光の弱い光を当てる方法は、論文では低出力レーザー療法や光バイオモジュレーションと呼ばれます。レーザー治療には、組織を削ったり切ったり、熱で固めたりする強いものがあります。「弱い」は、そうした強いレーザーより、当てる光の量や強さが小さいという意味です。光源には、レーザーのほか、LED(発光ダイオード)やフィルターを付けたランプが使われます[Avci 2013][Hamblin 2017]。
光は、組織をほとんど温めなくても、細胞の働きを変えることができます。変えられるかどうかは、光の波長と量によります。ただし、光の量は多いほどよいわけではありません。量や強さが大きすぎると、組織を傷めることがあります[Avci 2013]。
赤色光と近赤外光はどこまで届き、何に吸収されるか
赤色光と近赤外光は、青や緑の光より組織のはるか奥まで届きます。青や緑の光は、血液の色素(ヘモグロビン)によく吸収されるからです[Hamblin 2017]。肌では、赤色光は表皮の下の真皮まで届きます[Guo 2025]。
届いた先の細胞の中には、エネルギーを作る場所(ミトコンドリア)があります。シトクロム c 酸化酵素は、ミトコンドリアでエネルギーを作る反応の1つを受け持つ酵素です。この酵素は、赤色光と近赤外光を吸収します[Hamblin 2017]。
ラットの神経細胞で、波長によって酵素の働きの戻り方が違った
2005年の実験では、ラットの神経細胞を使いました。生まれて1〜3日のラットの脳から取り出し、皿で育てた細胞です。この細胞に、神経の電気信号を止める毒(テトロドトキシン)を6日間加えました。電気信号が止まった細胞は、エネルギーをあまり使わなくなります。そのため、シトクロム c 酸化酵素の働きも下がります[Wong-Riley 2005]。
シトクロム c 酸化酵素は、波長によって光の吸収しやすさが違います。どの波長を吸収しやすいかは、別の研究で報告されていました。この酵素が光を吸収して、細胞の働きを変えているとします。そうであれば、酵素の働きがよく戻るのは、この酵素が吸収しやすい波長のはずです。実験は、これを確かめるために、波長の違う光を当てました。
当てた光は、670・728・770・830・880 nm の5つの波長です(nm はナノメートル。波長の単位)[Wong-Riley 2005]。5つとも、赤色光から近赤外光までの範囲に入ります[Hamblin 2017]。
細胞は波長ごとに分け、それぞれ1つの波長の光だけを当てました。LED の光を、1日1分20秒当てました。当てたのは、毒を加えた6日間のうち、最後の5日間です。光の強さと時間は、5つの波長で同じです[Wong-Riley 2005]。照射条件は試験のもので、機器の使い方の目安ではありません。
測ったのは、酵素の働きと、細胞のエネルギーになる物質(ATP)の量です。酵素の働きは、酵素が働いたところにつく色の濃さで測りました。比べるために、光を当てた細胞のほかに、次の細胞も育てて測りました。
- もとのままの細胞:毒を加えず、光も当てない
- 毒だけの細胞:毒を加え、光は当てない
毒だけの細胞では、酵素の働きが下がり、ATP の量はもとのままの細胞の 82.5% になりました。670 nm では、酵素の働きも ATP の量も、もとに戻りました。728 nm では、酵素の働きは少ししか戻らず、ATP の量はほとんど戻りませんでした。770 nm では、酵素の働きは途中まで戻り、ATP の量はもとに戻りました。830 nm では、酵素の働きも ATP の量も、もとに戻りました。880 nm では、酵素の働きはほぼもとに戻り、ATP の量はもとに戻りました。
| 細胞 | 酵素の働き | ATP の量 |
|---|---|---|
| もとのままの細胞 | 比べる基準 | 比べる基準 |
| 毒だけの細胞 | 下がった | 基準の 82.5% に下がった |
| 毒+670 nm | もとに戻った | もとに戻った |
| 毒+728 nm | 少ししか戻らなかった | ほとんど戻らなかった |
| 毒+770 nm | 途中まで戻った | もとに戻った |
| 毒+830 nm | もとに戻った | もとに戻った |
| 毒+880 nm | ほぼもとに戻った | もとに戻った |
著者らは、5つの波長の結果を、シトクロム c 酸化酵素が吸収しやすい波長と照らし合わせました。酵素の働きがもとに戻った 670 nm と 830 nm は、吸収しやすい波長と重なっていました。少ししか戻らなかった 728 nm は、重なっていませんでした。
5つの波長の結果から、どこまで言えるか
5つの波長の結果は、どれも皿で育てたラットの神経細胞に毒を加え、働きを下げたうえで得たものです。人に光を当てたとき、しわや痛みがどう変わったかは、肌のしわと痛み・炎症の記事で扱っています。
2005年の実験の著者らは、シトクロム c 酸化酵素のほかに光を吸収する分子も、まだ調べる必要があるとしています。それでも、赤色光と近赤外光で細胞の働きが変わるときには、この酵素が重要な役割を果たすと考えています。波長を照らし合わせた結果は、その考えを強める、と書いています。
参考文献
- Avci P, Gupta A, Sadasivam M, Vecchio D, Pam Z, Pam N, Hamblin MR. Low-level laser (light) therapy (LLLT) in skin: stimulating, healing, restoring. Semin Cutan Med Surg. 2013;32(1):41-52. PMID: 24049929
- Guo Z, Yuan K. The Application of Light Emitting Diode (LED) in Cosmetic Dermatology. Photodermatol Photoimmunol Photomed. 2025;41:e70041. DOI: 10.1111/phpp.70041
- Hamblin MR. Mechanisms and applications of the anti-inflammatory effects of photobiomodulation. AIMS Biophys. 2017;4(3):337-361. DOI: 10.3934/biophy.2017.3.337
- Wong-Riley MTT, Liang HL, Eells JT, Chance B, Henry MM, Buchmann E, Kane M, Whelan HT. Photobiomodulation directly benefits primary neurons functionally inactivated by toxins: role of cytochrome c oxidase. J Biol Chem. 2005;280(6):4761-4771. DOI: 10.1074/jbc.M409650200