レッドライトセラピー(赤色光療法、学術的には Photobiomodulation=光生体調節)は、美容の話題になると「肌」「ニキビ」「髪」がひとまとめに語られがちです。けれども研究の中身を見ると、調べ方も、どこまで分かっているかも、テーマごとに違います。

この記事は、その全体地図です。テーマごとにどんな研究があり、何が未確定なのかを並べます。個々の研究の詳細は、それぞれの記事にゆずります。

まず、波長の呼び分け

Guo と Yuan が2025年にまとめた美容皮膚科の総説は、使われる LED を波長帯で分けています。青色(400〜470 nm。nm はナノメートルという光の波長の単位)、黄色(570〜590 nm)、赤色(630〜760 nm)、近赤外(760〜1200 nm)です[Guo 2025]。一方、Mineroff らの2024年の総説は、赤色光を620〜700 nm、近赤外を700〜1440 nm としています[Mineroff 2024]。「赤色光」という言葉が指す範囲は、文献によって一定ではありません。

Guo と Yuan の総説は、LED の光が皮膚の光受容体と相互作用して、ミトコンドリアの機能や免疫の応答を調節すると説明しています。細胞レベルの話はしくみの解説記事にあります。

しわ・肌の若返り——ヒトの対照試験が複数ある

対照群を置いたヒト試験がもっとも積み上がっているのが、しわと皮膚の若返りです。

Wunsch と Matuschka が2014年に報告したのは、136名の前向きランダム化対照試験です。赤色光(611〜650 nm、およそ9 J/cm²、週2回×30回)を当てたグループでは、皮膚の粗さや真皮のコラーゲン密度に、対照グループ(23名)との差が観察されました[Wunsch 2014]。Couturaud らが2023年に報告した研究は、45〜70歳の健常なコーカサス系女性20名に630±10 nm の LED マスク(15.6 J/cm²、12分、週2回)を3ヶ月続けたものです。目尻のしわの深さや真皮の密度は時間とともに変化したとされていますが、対照グループのない前後比較です[Couturaud 2023]。

Bragato らが2025年に報告した試験は、45〜60歳の健常女性95名を対象にしたシャム(偽の照射)対照の二重盲検ランダム化試験です。660±10 nm の赤色 LED マスク(8.05 J/cm²、21分)を週3回(計12回)当てるグループと週2回(計8回)当てるグループ、シャム対照グループに分け、4週間続けました。結果は、測定項目によって分かれました。しわ評価スケール(WAS)では、グループ間に有意差は認められませんでした。一方、画像解析で測ったしわの長さでは、眉間と右目の周りで照射グループが対照グループより有意に短いという結果が報告されています(p<0.001)。満足度質問票(FACE-Q)では、照射した2グループとも対照グループとの差が認められました。照射回数を増やしても満足度の結果は有意には変わらず、満足度の改善なら週2回で足りるように見えるとも述べられています[Bragato 2025]。

何をどう測るかで結論が変わることがある——対照試験が積み上がったテーマでも、それは起きます。Wunsch と Couturaud の研究の中身はしわ・コラーゲンの研究に、Bragato の試験の詳細と照射条件の読み方は家庭用LED機器の記事用量の考え方にあります。

光老化——まだ動物実験の段階

紫外線を浴び続けることで進む肌の変化(光老化)は、研究の段階が一段手前です。Cho らが2024年に報告した実験では、毛のないマウスに630 nm の LED を1回30分・1日2回・5日間当てたうえで、UVB を照射しました。紫外線だけを当てた場合とくらべて皮膚の組織の状態が良好で、コラーゲンと弾性線維の質が高まっていたと報告されています[Cho 2024]。Avci らが2013年にまとめた皮膚の総説も、赤色光や近赤外光が紫外線によるダメージを軽減しうると書いています[Avci 2013]。

どちらも動物実験と総説です。人で同じことが起きるかどうかは、これだけでは分かりません。詳細は光老化の記事にあります。

ニキビ——ここで追える試験は赤色光「単独」ではない

ニキビには二重盲検の対照試験があります。ただし、ここで条件まで追える試験は、赤色光だけを当てたものではない点に注意が必要です。Kwon らが2013年に報告した二重盲検シャム対照ランダム化試験は、軽度から中等度のニキビをもつ韓国人35名が対象です。420 nm の青色光と660 nm の赤色光を組み合わせた家庭用 LED を、1回2.5分・1日2回・4週間使いました。12週の時点で、炎症性の病変が77%、非炎症性の病変が54%減り、対照グループでは有意な変化がなかったと報告されています。組織を調べると、皮脂腺が小さくなり、炎症に関わる指標(IL-8、IL-1α、SREBP-1)の発現も下がっていたとされています[Kwon 2013]。

この結果のうち、どれだけが赤色光によるものかは、この試験の設計からは切り分けられません。Guo と Yuan の総説も、ニキビには青色光が主に抗菌作用によってはたらくと書いています[Guo 2025]。この問題はニキビの記事で扱います。

髪——メタ分析はあるが、対象は「低出力レーザー」

Liu らが2019年に報告したシステマティックレビュー・メタアナリシスは、成人の男性型・女性型脱毛症(AGA)を対象にした8つの研究/11件の二重盲検ランダム化比較試験をまとめています。低出力レーザー治療(LLLT)を受けたグループでは、シャム群とくらべて毛髪密度の増加が認められ、標準化平均差(SMD、効果の大きさを表す指標)は1.316(95%信頼区間 0.993〜1.639)でした。さらに、照射頻度の低いグループ(SMD 1.555)のほうが、頻度の高いグループ(SMD 0.949)より効果量が大きく、著者らは頻度が低いほうが毛髪の成長にとって良い可能性を示唆しています。なお、機器の種類と治療コースの期間は有効性に影響しなかったとも書いています[Liu 2019]。

髪は、この分野の歴史的な出発点でもあります。Mester らが1968年に報告したのは、マウスの毛の成長にレーザー光を当てた実験です。のちに光生体調節と呼ばれる分野の創設研究とされていますが、抄録が公開されておらず、照射条件を原文で確かめられません[Mester 1968]。詳細は髪の記事にまとめています。

4つを並べて見えること

4つのテーマは、それぞれ別の場所にいます。しわは対照試験の段階、光老化は動物実験の段階、ニキビは赤色光単独ではない条件、髪はメタ分析はあるものの対象が低出力レーザー治療という段階です。この足並みの揃わなさは、分野全体のレビューでも指摘されています。Glass は2021年に、皮膚若返り・ニキビ・創傷治癒・ボディコンタリング・男性型脱毛症の臨床文献をレビューしました。低エネルギーの赤色・近赤外光を支持する臨床試験のエビデンスは一定量あるとまとめています。その一方で、方法論上の欠陥、少人数のコホート、業界資金による研究が多く、エビデンスの質には改善の余地が大きいとも述べています。さらに、質の高い研究の多くはレーザー光源を使っており、LED 光源が同等の性質・大きさの生理的効果を起こすかどうかは今も不明だと指摘しました[Glass 2021]。

肌の色も変数のひとつです。Setchfield らの2024年の総説は、400〜1000 nm の範囲で、色の濃い肌の吸収係数が薄い肌よりおよそ6〜74%高いと報告しています[Setchfield 2024]。Mineroff らも、PBM の波長は多様な肌タイプ・人種・民族で異なる生物学的効果を起こしうると述べています。家庭用機器については、安全性と期待値の両方を管理するために、正しい使い方を説明することが大切だとしています[Mineroff 2024]。

この記事のまとめ


参考文献