家庭用の機器を前にして最初に困るのは、「何分当てて、週に何回やればいいのか」です。研究論文には、使われた光の条件が数字で書かれています。ただ、その数字は研究ごとにばらばらで、ひとつの正解値にはまとまりません。この記事では、研究で実際に使われた条件を、目的別に一つの表に並べます。「こうしなさい」という処方ではなく、「研究ではこう使われた」という事実の一覧です。

光の量を表す単位の読み方は用量の考え方に、機器のスペック表の見方は家庭用LED機器のスペック表を、研究の条件と突き合わせるに、目や肌の色に関する注意はレッドライトセラピーの安全性にあります。

なぜ「正解の数値」を一つに決められないのか

Zein らの2018年の総説は、この分野で調整できる条件として、波長・エネルギー・照射量・出力・照度・パルスの有無・照射時間・反復回数を挙げ、その幅の広さがしばしば一貫しない結果を生んでいると指摘しています[Zein 2018]。同じ総説は、ミトコンドリアの多い組織ほど少ない光の量で反応したこと、そしてそうした組織でうまくいかなかった研究は「過少投与よりも過剰投与によることのほうが多いと見られた」ことも述べています。多く当てるほどよい、という関係ではありません。

もう一つ、合計の光の量(J/cm²)を合わせれば同じ結果になる、というわけでもありません。Lanzafame らが2007年に報告したマウスの床ずれモデルの実験では、同じエネルギー密度になるように光の強さと照射時間の組み合わせを変えると、創傷治癒の結果が変わりました[Lanzafame 2007]。動物での結果なので、ヒトでそのまま成り立つかは別の問題ですが、「J/cm² の数字だけを合わせる」やり方に限界があることを示しています。

家庭用の機器では、光の強さはほぼ固定です。自分で動かせるのは、当てる時間と距離だけです。そこでこの表では、研究で使われた1回の時間頻度・期間を手がかりにしています。筋肉だけは研究が合計の量(J)で報告しているため、その値を載せました。

目的別の早見表——研究で使われた条件

目的光の色(波長)1回の時間・量頻度・期間出典
首の慢性的な痛み赤〜近赤外(低出力レーザー)研究ごとに幅研究ごとに幅16試験820名のメタ分析[Chow 2009]
肌のしわ・はり赤 611〜660 nm12〜25分/12分/21分週2回を30回(約15週)/週2回を3か月/週2回または3回を4週[Wunsch 2014][Couturaud 2023][Bragato 2025]
ニキビ(軽〜中等度)青 420 nm + 赤 660 nm2.5分1日2回を4週間家庭用機器の二重盲検試験・35名[Kwon 2013]
髪(薄毛)赤 630〜760 nm の帯(総説の区分)研究ごとに幅頻度の低い群のほうが効果量が大きい[Guo 2025][Liu 2019]
筋肉(運動の回復・パフォーマンス)赤〜近赤外 630〜950 nm小さい筋 20〜80 J/大きい筋 56〜315 J/全身 360〜510 J運動の前でも後でも報告あり[Ferraresi 2016][Tsou 2025][Li 2024]
睡眠(寝つき・質)近赤外 810 nm を前頭部に(装置を当てる)10分/20分以上3日連続/毎日8週間[Mehdizadeh 2025][Guu 2025]

表の読み方について、いくつか補足します。

表の使い方——5つの手順

  1. 自分の目的に近い行を見て、光の色が機器と合っているか確かめる。 機器の波長は箱か説明書に書かれています。肌の試験で使われたのは 611〜660 nm の赤色光、筋肉では 630〜950 nm の赤〜近赤外、睡眠の試験では 810 nm の近赤外でした。
  2. 機器の説明書にある時間と距離を、表の時間と見比べる。 大きく違っても、それは異常ではありません。必要な時間は機器の光の強さで決まるため、表の「12分」や「21分」をそのまま真似しても、同じ量にはなりません。計算の考え方は用量の考え方にあります。まずは説明書の値を守るのが現実的です。
  3. 頻度は、表の範囲の少ないほうから始める。 顔のしわを対象にした試験では、週3回と週2回で結果に有意差がなく、満足度は週3回 79.6%、週2回 73.4% でした[Bragato 2025]。薄毛の分析では、頻度の低い群の効果量(1.555)が高い群(0.949)より大きいという結果でした[Liu 2019]。回数を増やせば上乗せされる、という関係ではありません。
  4. 当てる場所・距離・時間を毎回そろえて、記録する。 家庭用の機器は、正しい使い方と期待値の管理を含めて使うものだと皮膚科の総説は整理しています[Mineroff 2024]。毎回の条件が変わると、届く光の量も変わり、続けた結果を読めなくなります。
  5. 説明書の上限を超えて長く当てない。 多く当てるほどよいわけではなく、ミトコンドリアの多い組織では過剰投与による失敗のほうが多かったとされます[Zein 2018]。

この表から読み取れないこと

この記事のまとめ


参考文献